松岡さんは、まるで詩人のように、目の前の光景に美しさを見出していく。時には優しく、時には鋭く、まだ言葉になる前の、意味を持たない美しさを。

ページをめくるうちに、八木重吉の詩が頭に浮かんだ。

花がふってくると思う
花がふってくるとおもう
この てのひらにうけとろうとおもう

『貧しき信徒』(八木重吉=著 新教新書)より引用

ありのままの被写体を、儚き毎日をそっと手のひらで受けとめているかのような写真たち。そんな様々な感情がまとわりついた写真を、かけがえのない愛でまとめ上げた写真集『マリイ』。

世界をこんなにも気持ちよく肯定してくれる1冊に出会えて、ただただ嬉しい。
黒田義隆|くろだよしたか|Yoshitaka Kuroda
BOOKSHOP & GALLERY 「ON READING」店主。パブリッシング・レーベル「ELVIS PRESS」代表